iDeCoと企業型DC併用の落とし穴:FPが解説するデメリットと賢い選択
iDeCoと企業型DCの併用を検討している方へ。独立系FPが、制度の複雑さ、コスト負担、拠出限度額の制約など、見落としがちなデメリットを徹底解説。あなたに最適な選択肢を見つけるためのヒントを提供します。
将来のために資産形成を始めたいけれど、iDeCoと企業型DC、どちらを選べばいいのか、あるいは併用すべきなのか、悩んでいませんか?特に、2022年の制度改正で企業型DC加入者もiDeCoに加入しやすくなったことで、「併用がお得なのでは?」と考えている方もいるかもしれません。
しかし、独立系ファイナンシャルプランナーとして多くの相談を受けてきた経験から言えるのは、iDeCoと企業型DCの併用には、見落としがちなデメリットが潜んでいるということです。制度の複雑さ、コスト負担、拠出限度額の制約など、知らずに始めてしまうと後悔する可能性もあります。
この記事では、iDeCoと企業型DCの併用を検討しているあなたが、賢い選択をするために知っておくべきデメリットと、あなたに最適な資産形成の道筋を、分かりやすく解説します。
iDeCo 企業型DC 併用 デメリットとは
iDeCo 企業型DC 併用 デメリットとは、個人型確定拠出年金(iDeCo)と企業型確定拠出年金(企業型DC)を同時に利用する際に生じる、コスト負担の増加、拠出限度額の制約、管理手続きの複雑化などの不利益な側面を指します。
iDeCo 企業型DC 併用 デメリットとは?
iDeCoと企業型DCの併用は、2022年10月の制度改正で可能になりましたが、マッチング拠出との排他的関係、年間2,000円〜4,000円程度の追加コスト、拠出限度額の制約、年末調整や転職時の管理手続きの複雑化といったデメリットが存在します。これらを理解せずに併用すると、かえって非効率になる可能性があります。
山田賢一(独立系ファイナンシャルプランナー)による解説
iDeCoと企業型DC併用の現状と落とし穴
2022年10月の制度改正により、企業型DCに加入している方もiDeCoに加入しやすくなりました。これにより、「誰でもiDeCo」の時代が到来したかのように見えますが、実際には複数のデメリットと制約が存在し、多くの会社員にとって最適な選択肢とは言えないケースが少なくありません。
拠出限度額計算の複雑さ
iDeCoの拠出限度額は、企業型DCの事業主掛金によって変動します。他の企業年金がない場合は月額55,000円、ある場合は月額27,500円から、企業型DCの事業主掛金を差し引いた金額がiDeCoの拠出上限となります。ただし、iDeCoの拠出上限は月額20,000円が上限です。この複雑な計算構造が、併用を検討する際の最初のハードルとなります。
例えば、企業型DCの事業主掛金が月額35,000円の場合、iDeCoに拠出できるのは月額20,000円(55,000円 - 35,000円 = 20,000円)が上限となります。もし企業型DCの事業主掛金が月額35,000円を超えていれば、iDeCoには拠出できません。
マッチング拠出との排他的関係
企業型DCには、会社が拠出する掛金に加えて、従業員自身が掛金を上乗せできる「マッチング拠出」という制度があります。このマッチング拠出とiDeCoの併用はできません。つまり、企業型DCでマッチング拠出を利用している場合は、iDeCoに加入することはできないのです。多くの企業型DC導入企業ではマッチング拠出が利用可能であり、これがiDeCo併用を阻む大きな要因となっています。
2025年最新情報:制度変更が併用に与える影響
2024年12月からは、確定拠出年金の拠出限度額の計算において、企業型DCの事業主掛金だけでなく、確定給付企業年金(DB)の掛金相当額も控除対象となります。これにより、iDeCoの実質的な拠出可能額がさらに減少する可能性があります。この制度変更は、iDeCo併用のメリットをさらに薄めることになります。
併用選択率の低さ
制度改正後も、企業型DC加入者のiDeCo併用率は10%程度にとどまっています。これは、併用に伴うデメリットの多さが、多くの加入者にとって魅力的ではないことを示しています。一方で、マッチング拠出を選択する加入者は85%を占めており、コスト面や管理面での優位性が明らかになっています。
iDeCoと企業型DC併用の主要デメリットを徹底解説
独立系ファイナンシャルプランナーとして、iDeCoと企業型DCの併用を検討する際に特に注意すべき主要なデメリットを具体的に解説します。
1. コスト負担の増大
iDeCoには、企業型DCにはない独自のコストが発生します。これらは、併用することで年間数千円の追加負担となります。
- iDeCo固有コスト:
- 初期費用:2,829円(加入時手数料)
- 月次費用:171円(国民年金基金連合会手数料)+運営管理機関手数料(金融機関によって異なるが、月額0円〜数百円)
- 年間総コスト:約2,000円〜4,000円
一方、マッチング拠出は企業が運営管理手数料を負担するため、加入者に追加コストは発生しません。このコスト差は、長期的に見ると無視できない金額になります。
2. 拠出額制限の実際
前述の通り、iDeCoの拠出限度額は企業型DCの事業主掛金に左右されます。例えば、企業型DCの事業主掛金が月額35,000円の場合、iDeCoに拠出できるのは月額20,000円が上限です。しかし、マッチング拠出であれば、事業主掛金と同額まで(この場合は35,000円)拠出可能です。つまり、マッチング拠出の方がより多くの金額を非課税で積み立てられる可能性が高いのです。
3. 管理手続きの複雑化
iDeCoと企業型DCを併用すると、税務上の手続きや転職時の手続きが複雑になります。
- 年末調整: 企業型DCの掛金は会社が年末調整で処理してくれますが、iDeCoの掛金は個人で確定申告を行うか、年末調整で別途手続きをする必要があります。手続き漏れがあると、せっかくの税制優遇が受けられません。
- 転職時: 転職先の企業型DC制度によってiDeCoの拠出限度額が変動するため、転職のたびにiDeCoの拠出額を見直す必要があります。また、転職先でマッチング拠出が魅力的な場合は、iDeCoの停止や資産移換を検討する必要も出てきます。
- 受給時: 将来、年金を受け取る際も、iDeCoと企業型DCそれぞれで異なる手続きが必要となり、管理負担が増大します。
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よくある質問(FAQ)
- Q1: 企業型DCがあってもiDeCoと併用した方が節税効果は高いですか?
- A1: 拠出限度額とコストを考慮すると、多くの場合マッチング拠出の方が効率的です。iDeCo併用では年間2,000-4,000円の追加コストが発生し、拠出限度額も制約されるため、純粋な節税効果は限定的です。
- Q2: マッチング拠出とiDeCo、どちらを選ぶべき判断基準は?
- A2: ①現在の企業型DC拠出額 ②マッチング拠出の上限額 ③投資商品の選択肢の多様性 ④管理手続きの負担許容度の4点で判断します。一般的には月額拠出可能額が20,000円以下ならマッチング拠出、投資商品選択にこだわりがある場合のみiDeCo併用を推奨します。
- Q3: 転職時にiDeCoと企業型DCの併用でどのような手続きが必要ですか?
- A3: 転職先の企業型DC制度によってiDeCo拠出限度額が変動するため、拠出額変更手続きが必要です。また、転職先でマッチング拠出が魅力的な場合は、iDeCoの停止も含めた見直しが必要になります。
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まとめ
iDeCoと企業型DCの併用は、一見すると資産形成の選択肢が広がるように見えますが、独立系ファイナンシャルプランナーとして、私はそのデメリットを十分に理解した上で判断することの重要性を強調します。
主なデメリットは、マッチング拠出との排他的関係、年間2,000円〜4,000円程度の追加コスト、拠出限度額の制約、そして管理手続きの複雑化です。これらの点を総合的に考慮すると、多くの場合、企業型DCのマッチング拠出を利用する方が、コスト効率と利便性の面で優位性があります。
iDeCo併用を推奨するのは、投資商品の選択肢に強いこだわりがあり、年間数千円のコスト負担や管理手続きの複雑さを許容できる、ごく一部の上級者に限られます。2025年以降も制度の根本的な改善は予定されておらず、むしろ拠出限度額がさらに制限される可能性もあります。
制度の複雑さに惑わされず、あなたにとって最もシンプルで継続しやすい資産形成の道を選ぶことが、長期的な成功への鍵となります。迷った際は、ぜひ専門家であるファイナンシャルプランナーにご相談ください。